クロード・レヴィ=ストロース『火あぶりにされたサンタクロース』再読

書店をうろついていたとき、見覚えのあるタイトルと名前が視界に飛び込んできた。

自分がこの本を手に取るのは二度目だ。学生の頃だったか、それとも大学入学前だったか、とにかくそのあたりで読んだ記憶がある。当時は調べものの一環として目を通した程度であったため、いつかしっかり読まなければ、といった、ある意味後ろめたさのようなものがあったのかもしれない。

発行日を見ると2016年の12月、つい最近じゃないか。そう思った自分は迷わずレジに向かった。

 

火あぶりにされたサンタクロース

火あぶりにされたサンタクロース

 

 

かつて本書は『サンタクロースの秘密』という邦題で出版されていた。それが改題されて『火あぶりにされたサンタクロース』、である。ずいぶんと過激になった。原題はフランス語で Le Père Noël suppliciè といい、Le Père Noël「サンタクロース」suppliciè が「刑罰に処された」とった意味である(フランス語では、形容詞は基本的に名詞の後ろに置かれる)。

本書は、1951年フランスのある地方で起きたサンタクロースの異端者認定、そののち聖堂の前でサンタクロース(の人形)が火刑に処せられるという不可解な「事件」についての、ごく短い論考である。子供の友であり親の分身でもあるサンタクロースが、一体なぜ教会からこのような仕打ちを受けたのか。著者は現在起きている出来事から離れ、プエブロ・インディアンの習慣やローマ時代の習慣を例に挙げることによって、この難問に対する見事な解答を導き出す。

 

自分は彼の持ち味であるこの、「無重力の文化」とでもいうべき思想に強く惹かれる。

「未開」の文化と「洗練された」文化の重さは、人が作り上げたものという意味で等しい。同様に人が作ったものだから、両者には一定の秩序が存在している(「未開」の秩序の発見は我々には少し難しいが)。したがって両者は互いの比較対象となりうる。いたって単純な話だ。

レヴィ=ストロースはこのシンプルな理論(構造主義と呼ばれることが多い)を用いることで、未だキリスト教的価値観=普遍性という思想が根強く残っていた20世紀半ばの欧米諸国に対し一石を投じたのである。彼の代表的な著作である『野生の思考』、そのタイトルからも当時の彼の意気込みが伝わってくるだろう。

 

 

野生の思考

野生の思考

 

 

本書は中沢新一氏の訳もあって、非常に「読ませる」論考になっている。レヴィ=ストロースの文章は基本的に難解かつ複雑であるため、気軽に読みにくいと思う人も少なからずいると思われるが、この『火あぶりにされたサンタクロース』は彼の文章に対してそういった感想を抱いている人にこそ読んでもらいたい。

対談で構成された『神話と意味』がレヴィ=ストロースの理論の入門書であるとするならば、本書『火あぶりにされたサンタクロース』はレヴィ=ストロースの著作の入門書であるといえるだろう。

 

神話と意味【新装版】

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